無料ブログはココログ

« 『翻訳と雑神』 | トップページ | 『こころと脳の対話』 »

2008年7月24日 (木)

『プルタークの物語』(上)

阿刀田高/潮出版社/1785

     

  プルタークの物語 上 (1)

 本書は、著者の記すところによると、「古代ローマの時代に書かれた著名な古典〈プルターク英雄伝〉の翻案である。ややこしい内容を私なりに平易に綴って紹介する試みである」ということだ。

                      

《第1話 アテネを創ったテセウス》

 *テセウスの宣言により都市国家としてのアテネが誕生し、共和制の第一歩が踏み出された。

 *後にアリストテレスがこう言っている。

 「民衆を愛し、王制を廃したのはテセウスをもって嚆矢とする」と。もってテセウスがアテネの創始者と称される所以である。

《第2話 ローマを創ったロムルス》

 *「私たちは夫も父も失いたくないわ。もちろん子どもは一番大切。もう人殺しはたくさん」……女たちの素直な心と愛情が男たちを反省させ愚かな戦争をやめさせた。

*プルタークはなにかしら伝承された記録をもとにこのくだりを綴ったにちがいない。だとすれば、それは女性たちによるもっとも古い反戦行動の文学だったかもしれない。

*とかく権力を握った者は初心を忘れて傲慢に傾く。

          

《第3話 アテネの立法者ソロン》

 *リュディアの王に告げたソロンの言葉

「現在の幸福、現在の不幸、それに一喜一憂することはありません。さまざまな未来がやって来るでしょう。最後に神が与えてくれるもの、その繁栄こそが大切です。まだ競技の途中にあるのを見て勝利の判定を下すのは愚かであり、当てになりません」

                   

《第4話 栄誉を求めたテミストクレス》

 *水上滝太郎の代表作〈貝殻追放〉というエッセイ集のはしがき

 「厚顔無恥なる野次馬が、その数を頼みて貝殻をなげうつは、敢えてアゼンス(アテネのこと)の昔に限らず、到る処に行はるといへども、殊に今日の日本に於てその甚しきを思はざるを得ず」

                     

 著者はこの言葉に続けて、「現代でも、そういう制度をこそあからさまには存在しないけれど、実際には魔女狩りのような形で見え隠れしている」と警告している。

               

《第5話 尊大な民主主義者ペリクレス》

 *哲学者プラトンの評価

「まこと、ペリクレスは人心操縦術の名人、タイミングよく有効な言葉を発して民衆を導いた」

 *アテネで全ギリシャの平和会議を催そうと誘いかけた。……ペリクレスは平和を重んじ、戦争に関しても穏やかな作戦を旨とした。

 *ペリクレスほどの功績があっても一歩まちがえば弾劾をまぬがれない。健全な民主主義とはそういうものかもしれない。民衆を代表して全権を委ねられているのだから……。

                     

《第6話 先送りの人ファビウス》

《第7話 カメレオン的英雄アルキビアデス》

《第8話 母には弱い猛将コリオラヌス》

《第9話 テーベの英雄ペロピダス》

《第10話 口からジャブを飛ばした大カトー》

《第11話 ママの宝石はグラックス兄弟》

 *「おれたちに逃げ道はない。民衆のために尽くすこと、それだけだ。ただ一つの生き方、ただ一つの死に方しかないのだ」

 この章で、著者はプルタークのグラックス兄弟に対する評価に、厳しく異を唱えているのが注目される。

 「兄弟は壮絶な死を遂げ、直接の後継者こそすぐには現れなかったけれど、その精神はまちがいなくローマに、いやヨーロッパの歴史に深く影響を残したと言ってよい。……私見を述べれば、グラックス兄弟は、その後に空前の発展を示すローマに関わったことにおいて、また明確に民主民生という理念を所持していたことにおいて、軽々に他と比較対照されてよい存在ではあるまい」

 まったく同感である。

《第12話 善悪けた外れのスラ》

 *大きな権力というものは本来的に人間を非道に変え、御しがたいものとする属性を含んでいるのだろうか。それとも大きな権力とともに隠されていた悪しき本性が現れるものなのだろうか。

« 『翻訳と雑神』 | トップページ | 『こころと脳の対話』 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『プルタークの物語』(上):

« 『翻訳と雑神』 | トップページ | 『こころと脳の対話』 »

最近のトラックバック