桑原武夫学芸賞贈賞式
第11回桑原武夫学芸賞の贈賞式が京都で開催された。
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「長年のテーマ評価、幸運」 桑原武夫学芸賞の四方田氏
2008.07.09 京都新聞 朝刊17版 26頁 対向面 (全342字)
第十一回桑原武夫学芸賞(潮出版社主催)の贈賞式が八日、京都市中京区のホテルであり、映画史・比較文化研究者で明治学院大教授の四方田犬彦氏に賞が贈られた。
受賞作品は「日本のマラーノ文学」と「翻訳と雑神」(いずれも人文書院)の二作。在日韓国・朝鮮人や被差別部落出身者ら出自を隠して生きる表現者たちが文学で何を描いてきたかなどを論じた。
式では、選考委員の鶴見俊輔氏が選考経過を報告。「比較文学の視点から日本語の特色を解剖した鮮やかな仕事」とたたえた。四方田氏は「出自を隠して生きることに対し、文学は何ができるか。長年取り組みたいと思ってきたテーマを評価してもらえたのは幸運」と喜びを語った。
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日本のマラーノ文学 著者:四方田 犬彦 |
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翻訳と雑神―Dulcinea blanca 著者:四方田 犬彦 |
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鶴見俊輔氏は選考経過報告の中で、次のように作品を評価されている。
《比較文学という私たちの日常から遠い学問の中の区分、概念を持ってきて、いま使っている日本語の特色を解剖して見せ、日本語と日本文学に潜むドラマを見せる。この鮮やかな仕事に、拍手を贈りたいと思います。
比較文学の方法は、西脇順三郎、吉増剛造、寺山修司、中上健次の文学の分析にも鮮やかな新しい方法となって入り口をつくっています。日本文学を世界の隅に孤立する営みとしない新しい見方へと誘います》
受賞者の四方田 犬彦氏は、受賞作誕生の経緯を披瀝して受賞挨拶をされた。
《まず、この本をどのようにして構想したかを簡単に申し上げたいと思います。10年ほど前ですが、人文書院の編集者の方が、東京に来た折に私の大学の研究室に立ち寄られました。いずれ四方田の本を出したいのだけれども、どういう本を考えているのかと言われ、私は、次の10年間くらいでこういう本を書きたいという簡単なリストを見せました。「白土三平論」や「ブルース・リーの評伝」とか、「美術論集」とか……題名だけでまだ書いていませんが、こういういろいろなものを十何冊考えていると。
その中で、「とにかくこれは絶対に引き受け手がないだろう」という本を2冊考えていましたが、それを最後に書いておきました。それは、「日本における朝鮮史の翻訳の歴史の考察」と「日本におけるマイノリティのカムアウトと、その告白の問題を文学的に探求する」というテーマでした。この2つのことを漠然と考えていましたが、これは日本の出版社ではまず商売にならないだろうと思い、だめもとと思って、一応書いていたわけです。
売れる本は「ブルース・リーの評伝」とか、「韓国語のタメ口の研究」といった本だろうと。多分、そういうほうが上のほうに書いてありましたが、「では」というのでずっとリストを見て、「一番下の2冊をいただきます」とおっしゃられました。つまり、私が絶対に売れない、本にできないだろうと考えていた2冊を、「これとこれをいただきます」とスラッとおっしゃいました。私は、「それはいいですが、大変ですよ。300部しか売れません。日本語による朝鮮語の翻訳の歴史なんて誰が関心を持つでしょうか。私は書きたいですが、会社としては大変なことになりますよ」と言ったら、「いや」と言ってケラケラと笑っていらっしゃった。そういうわけで、2冊の本を1つのカップリングで作るという構想ができました。その構想自体は私が考えていたことです》
選考委員・梅原猛氏の発声で乾杯し、祝賀パーティがにぎやかに開催された。







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